シリコンバレーのスタートアップ “Ignition Design Labs (イグニション・デザイン・ラボ)社” が、気象レーダー帯域チャネルを検知して接続する無線ルーターの新製品「Portal」を発表。国内では6月30日よりクラウドファンディングを開始した。
制約の多い気象レーダー専用チャネルを自動で検知し接続することで、都心部の混み合いがちな無線環境でも途切れることなく快適に接続しようというユニークなコンセプトの製品。
Portal について
Portal はシリコンバレー生まれの無線LANルーターで、見た目も中身も今までのルーターとは一味違うタイプの WiFiルーター。5月に米国のクラウドファンディングサービス “KickStarter” で出資を受付け、現在では4000人以上がサポートし、目標額の約5倍の出資額を集めている。
日本国内では6月30日から「グリーンファンディング」で出資を募っており、わずか1日で目標額の2倍を達成している。
主な仕様
- サイズ:約240mm(W) x 180mm (D) x 43mm (H)
- 重量:約540g
- 帯域: 5GHz帯
- W52 : 5.150 – 5.250 GHz
- W53:5.250 – 5.350 GHz帯 – DFS
- W56 : 5.470 – 5.725 GHz帯 – DFS
- 2.4GHz帯
- 2.400 – 2.484 GHz
インターフェイスはこんな感じ。
従来の無線LANルーターと何が違う?Portal の特徴
Portal の特徴を簡単に説明しておくと
- 独自の技術で混雑していない気象レーダー向けのチャネルも使える
- 9基のアンテナを搭載し遠方まで WiFi 環境を構築できる
- アプリでスマートフォンからネットワークのセキュリティ環境を制御できる
といったところ。箇条書きでひとこと書いてもわからないと思うので、何がすごいのかを1項目ずつ説明していきたい。
独自の技術で混雑していない気象レーダー向けのチャネルも使える
上画像は 5GHz 帯域の混み具合をビジュアル化したもの。黄色や赤いところが混み合っている箇所で、市販のほとんどの回線が左右のどちらかに偏っている。画像の緑の帯域は気象レーダーなどの優先チャネル (DFS帯) として割り当てられているため、現状では 98% の利用者が全体の 35% の帯域をわけあって使っており、65%が有効に使用されていない。なお日本国内では1~5の帯域のみ利用可能。
このチャネルは市販の無線LAN ルーターでも利用可能なのだが、DFS の法的義務で「DFS帯にレーダーがいないか1分間の確認が必要→レーダーを常に監視し、レーダーを検知したらそのチャネルの使用を停止」と定められている。厳密に言えば DFS帯を使えないわけではないのだが、レーダーを感知する度に1分間のインターバルを設ける必要があり、現実的に考えると常用できる帯域ではないことが分かる。
この問題を Portal は、スペクトラムターボチャージャー技術(FCC認証)という独自開発の技術を用いることで、従来の WiFi ルーターでは使用が難しいとされていたDFS帯域への接続がシームレスに行えるようになっている。
イグニション・デザイン・ラボ社が独自に開発した受信チップにより、自動で全てのDFS帯域を含めたチャネルを見張ることが可能。レーダーを検知した瞬間に、ほぼ遅延なく別のチャネルに移動でき、DFSの法的義務である1分間のインターバルを設けずに通信が可能。
簡単に言えば、車の自動運転みたいなことを WiFi 環境で実現し、空いている道を自動で運転。正面から車が来たら別の車線に変更するので、混みあった一般道(上画像の左右の赤い帯域)を走らずにスイスイ進めるといったところ。
この画像は実際に行われたデモの WiFi Analyzer の画面。左側のチャネルは非常に混み合っているが、右側の Portal が接続しているチャネルは空いている(というか Portal しかない)ことが分かる。
実際に行われたデモではほぼ回線の最大値に近い数値がでていた。すごい。
9基のアンテナを搭載し遠方まで WiFi 環境を構築できる
Portal は、丸くて可愛らしいフォルムに反して9基の強力なアンテナを内蔵している。これにより、 1 つの Portal で中継器なしで約 232 平米 (70 坪) の家屋を完全に網羅できるそうだ。一人暮らしや狭い都内の住宅だと距離による恩恵は受けにくいかもしれないが、オフィス街やちょっとしたコワーキングスペースなんかでは便利に使えそう。
専用アプリでネットワークのセキュリティ環境を制御
Portal には専用のスマートフォンアプリが存在し、Portal と Bluetooth 接続することで、ワンタッチでセットアップやゲストネットワークの設定、リアルタイムの通知およびリモート管理ができる。
たとえば家に1日だけ友人がくるときなど、 SSID や パスワードを伝えずにセキュアな環境を保ったままネットワークに接続することができる。ただし現時点では Android OS と iOS のみの対応(アプリは Android のみ)で、PC版や iOS 版アプリは記事執筆時点では準備段階。11月の出荷までにはこういった端末にも対応できるようにしたいとのことだった。
スマートフォンだけでなく様々な端末や OS に対応すれば、自宅のみならずコワーキングスペースや Airbnb などでも幅広く活用できる。僕の家もよく人が来てパスワードの共有が面倒だったので、開発者の皆さん 11月までに対応お願いします。
まとめ
クラウドファンディング公開からわずか1日で目標額の190%に達している Portal。多くの WiFi ユーザーが悩む「ちょくちょく途切れる」、「時間帯によってWiFi速度が遅くなる」といった点を克服する WiFi ルーターなので期待は高い。
出荷は11月ごろが目標。記事執筆時点で 13,800円の「超早割り!限定100台」が終了しているが、日本限定色のブルーはまだ残っているので欲しい人はお早めにどうぞ。