クリエイターのハブとなる。台湾の会員制雑誌図書館『Boven』オーナーSpencer氏のカバンの中身

「みんなのカバンの中には、いったいどんなモノが入っているのだろう?」という疑問からスタートしたこの企画。モノと旅と暮らしの個人メディア『トバログ』を読んでいる人から募集したカバンの中身を厳選して紹介している。「あんなモノ」から「こんなモノ」まで、リアルなユーザーのカバンの中身を紹介しよう。

今回は「しとしと雨の台北。会員制の雑誌図書館『Boven』で悠々自適に読書を楽しむ」で紹介した『Boven雜誌圖書館』のオーナーである Spencer さんのカバンの中身を紹介しよう。お洒落な雑誌図書館を手がける彼のカバンには、いったいどんなアイテムが入っているのだろうか。

 

※この記事は2018年に公開した記事を再編集して掲載しています

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このカバンの持ち主:会員制の雑誌図書館『Boven』オーナー Spencer さん


Spencer さんが手がける『Boven雜誌圖書館』は、台湾の台北市にある会員制の雑誌図書館だ。台湾のデザイナーや建築士、雑誌編集者などが足繁く通うコワーキングスペースのような空間で、日本や欧州など国内外から取り寄せた雑誌を楽しむことができる。

台湾のタワーレコードで海外雑誌コーナーの担当として働いていた Spencer さんが、海外の雑誌をもっと人と共有したいという思いから2015年に立ち上げ、クリエイターを中心に人気を博している。

立ち上げから3年半が経った現在では、台湾のカルチャー好きを中心に、現在2000人の会員が利用する空間となった。詳しくは「しとしと雨の台北。会員制の雑誌図書館『Boven』で悠々自適に読書を楽しむ」を読んでもらうとして、Spencer さんのカバンの中身を紹介していこう。

 

『Boven雜誌圖書館』オーナー Spencer さんのカバンの中身と持ち物

Spencer さんのカバンの中身はこんな感じ。必要最低限といった印象で、シンプルながらも質感が感じられる。非常に洗練されていてお洒落だ。
それでは一点ずつ紹介していきたい。

 

カバン:MHL. のショルダーバッグ

イギリスのブランド「MARGARET HOWELL(マーガレットハウエル)」が手がけるライン『MHL.』のショルダーバッグを愛用する。

台湾のセレクトショップで6年ほど前に購入し、大切に使っているとのこと。丈夫で汚れも目立たない点がお気に入り。台湾ではバイクに乗って移動することが多く、ハンドル操作がしやすく荷物も取り出しやすいショルダーを愛用するそうだ。

 

ノートパソコン:MacBook Air 13インチ

雑誌の受注など、仕事をこなすために13インチ MacBook Air を愛用する。ステッカーはイラストレーターの友人が手がけたもので、映画の主人公をモチーフにしているそうだ。シュールでコミカルなデザインがお洒落。

 

MacBook Air を収納するケースはネオプレーン製のお洒落なストライプ柄のスリーブケース。PC などを取り扱う専門店で購入したとのこと。
シンプルだけどストライプ柄でシンプルすぎずにお洒落な点が気に入っている。

 

スケジュール管理はモレスキンで

スケジュール管理のためにモレスキンのノートブックを愛用する。書きやすく、デザインもシンプルでお洒落な点が気に入っているそうだ。

 

カラーはオレンジ。これは Boven の内装のキーカラーがオレンジであることから由来している。コンクリートのグレーと、木のブラウン、そしてキーカラーのオレンジが調和する。

 

本:増田のブログ CCCの社長が、社員だけに語った言葉

今持ち歩いている本は、蔦屋書店を経営する CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の社長である増田宗昭さんが、社員に向けて書いたブログを書籍化した『増田のブログ』。

「彼の理念が僕とものすごく似ているんです」と話す Spencerさん。お客様の立場に立って書店のあり方を考え、空間を創り上げていく点に非常に感銘を受けたそうだ。とくに「神は細部に宿る」という言葉がお気に入り。

 

公長斎小菅(こうちょうさい こすが)のみやこ箸

外食が多いという Spencerさんは、エコのためにマイ箸を持ち歩く。京都の老舗竹細工店『公長斎小菅(こうちょうさい こすが)』のみやこ箸をケースと一緒に持ち歩いている。デザインがお気に入り。

 

Driver のマイボトル

Driver(ドライバー)というメーカーのマイボトルには、アイスコーヒーを入れて持ち歩く。保冷効果が抜群で、男らしくシックなデザインに惚れて購入。

 

オーディオテクニカの Bluetooth イヤホン

作業をするときやバイクで移動する際に着用。元々タワーレコードで働いていたということもあり、音楽は大好きで、2,000枚ほど CD を持っていた。よくジャズやクラシックを楽しんでいる。

 

「なんで Boven を作ろうと思ったの? 」「紙で読む魅力って? 」Spencer さんにいろいろ聞いてみた

――Boven を立ち上げた理由を教えてください

タワーレコードで海外雑誌コーナーの担当をしていたということもあり、日本や米国など海外の雑誌に興味があり、これまで趣味として集めていました。

雑誌は面白いメディアで、デザインや写真、文章などすべてが凝縮した結晶のようなもの。とくに海外の雑誌はサイズもレイアウトも表現もそれぞれ全く異なるし、ものすごく面白いんです。
ただ、こういった海外の雑誌は図書館では取り扱っていないし、海外雑誌を専門とした書店もない。海外の雑誌をもっと色々な人に知ってもらいたい、共有したいという思いから、Boven を立ち上げました。

 

―― なぜ書店ではなく会員制の雑誌図書館という形でオープンしたのでしょう?

僕がやりたいのは “販売” ではなく “共有” だと思ったからです。

Boven の前身は、レコードや雑誌を販売するショップでした。「みんなに海外の雑誌やレコードを知ってもらいたい」という思いがあったのですが、販売をしているとどうしてもお金を持っている人を相手にし、販売することでしか利益を得られないんですね。

それは本当にやりたいコトと違うなと。それで有料会員を募って、その人たちが本当に読みたい雑誌を積極的に揃える雑誌図書館をやろうと思ったんです。オープンから3年半経った今では、会員数が約2,000人ほどになりました。

 

――2000人も会員が! すごい。どんな人が利用するのでしょうか?

色々な職種の人が会員となっていて、雑誌が本当に好きな人から定期的に情報を収集したい人までさまざまです。ただ、やっぱりクリエイティブな職業に就いている人が多く、例えば建築士やファッションデザイナー、雑誌編集者、カフェやシェフのオーナーなどが多く利用しますね。

なので蔵書している雑誌はファッション系やライフスタイル誌など多くの人が手にするジャンルはもちろん、建築系の専門誌など比較的ニッチなジャンルの雑誌も揃えています。彼らがここに訪れたときに、アイデアをどんどん醸成してもらえると嬉しいですね。

 

――日本では Kindle や dマガジンといった電子書籍サービスで雑誌を読む人も増えています。Spencer さんにとって雑誌を紙で読む理由は何だと思いますか?

雑誌はそれぞれ紙質やサイズ、インクなど「モノ」に対して記事の内容が最適化されています。そのため表現が幅広いし、見た人が同じ気持ちで読むことができるんです。

 


例えばこの雑誌は、このサイズだからこそ写真が視界全体に入り込んできて、インパクトがあります。

でも数インチのスマートフォンだったら、単なる1枚の画像にしか過ぎませんよね。それではこの雑誌の魅力を最大限に伝えることはできません。

 


また、この雑誌は特殊なインクを用いていて、光の角度によって見え方がまったく異なります。これも電子書籍では表現が難しいでしょう。

ウェブは大変便利で、今どきはスマートフォンさえ持っていればデータで何万冊も持ち歩くことができますね。しかしスマートフォンやタブレットのサイズによって読み手の感じ方も違うし、質感もディスプレイのガラスだけ。これだと雑誌の魅力は半減してしまいます。

こうした素材の質感やページをめくったときの印象など、五感で雑誌を楽しむならやっぱり紙で読んだほうが、製作者の意図が伝わると思います。

 

――なるほど、しっくりきました。それでは今後 Boven はどのような展開を考えていますか?

この『Boven雜誌圖書館』は地下一階にあるのですが、道路に面した1階に雑誌の世界観を意識したセレクトショップをオープンする予定です。例えばファッション誌なら、その本に載っている服を置いたり、植物の雑誌ながら実際にその植物を展示したり。アイデアはたくさんあるので、まずはそこをしっかりと形にいていきたいと思います。

将来的な展望としては、雑誌が自由に読めるホテルも経営してみたいですね。ホテルの部屋ごとにテーマが違う部屋を用意して、バックナンバーが読めるとか。もちろん日本への展開も考えていますよ。

 

まとめ

こんな感じで台湾で会員制雑誌図書館『Boven雜誌圖書館』のオーナー Spencer さんのカバンの中身を見せてもらった。カバンの中身も洗練されていてとてもクールなのだけれど、Boven のコンセプトも面白い。

雑誌専門店として書店を開くのではなく、外国の雑誌が読める会員制の図書館を立ち上げるというのは良いなあと感じる。また、そのコンセプトだけでなく、各界さまざまなクリエイターが集まって Boven で情報収集をするという点も面白く、そこが彼らにとっての情報とつながりのハブとなっているのはかなり羨ましい。

僕も台北に住んでいたら絶対に会員になって週5くらいに入り浸るだろうなあと、取材をしながらここで作業をして感じた。台北に訪れる際はぜひ Boven に足を運んでみてほしい。