黄昏時の台北と、異世界へのいざない


もう何度目の台北かはよく憶えていないくらい、台北には足を運んでいる。「なぜ台北なのか。」の理由は、自分でもよく分からないのだけれど、美味しい食事や、活気に溢れた街の雰囲気が好きだから。

それともう一つ、街全体がどこか幻想的で、異世界に迷い込んだような雰囲気が感じられるからだ。昼と夜が交わる時間帯、いわゆる黄昏時(たそがれどき)や禍時(まがどき)と呼ばれるこの空の色が、台北の街並みと交わって異世界のような雰囲気となる。

 

雨の多い台北では、一日中晴れていることは稀。だいたいいつも、昼過ぎから午後にかけてしとしとと雨が降る。亜熱帯地域の台北ならではの気候なのだろう。

そしていつも、日が暮れる頃には、赤紫色の美しい夕焼けを見せてくれる。昼とさよならをして、夜を迎え入れる準備が始まるのだ。ここが台北なのか、台北に似た別の世界なのか。それが分からなくなるほどに不思議な感覚。

 

大きな川は県境や国境など、どこかとどこかの境目とされることが多い。日本には昔から “三途川” という言葉があり、現世とあの世を分ける境目として知られていて、そこを渡ることは、すなわち死を意味する。

普段は何も感じない台北市と新北市を繋ぐこの橋も、黄昏時に渡ってしまうと、僕はどこか違う世界へ迷いこんでしまいそうな気がする。怖くなって橋の真ん中で引き返した。

 

街に戻ると、すっかりと日が暮れ、辺りは夜になっていた。街全体がネオン街に包まれているかのような夜の台北は、どこか妖艶な雰囲気が漂っている。

橋の途中で引き返した僕だけれど、もうすでに異世界に飲み込まれていたのかもしれない。

 

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