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フィルムカメラと建築が好き。チェコ人カップルとの素敵な出会い|旅、チェコ。

フィルムカメラと建築が好き。チェコ人カップルとの素敵な出会い|旅、チェコ。


トバログで連載中の『旅、チェコ。』より。チェコ東部、工業都市であるオストラヴァを後にし、企業と共に大きく成長してきた街『Zlín(ズリーン)』へとやってきた。

この街はチェコの中でも大きな産業都市で、Bata(バタ、バキャ、バチャ(発音的にはバテャ))という製靴メーカーが拓いた街と言える。1800年代前半は人口わずか3000人ほどだった小さな村だったのだけれど、 Bata の創始者でありこの街の出身である Tomáš Baťa(トマーシュ・バチャ)が工場を作ったことで、第二次世界大戦時には4万人にまで増えた。

当時のチェコではまだ珍しい「雇い主が従業員のための街を作る」という、さながら日本の大企業のような振る舞いをしていて、従業員には大変慕われていたそうだ。現在のズリーンでは、その Bata 時代に建てられた珍しい建築物を見ることができる。

 

共産主義時代に Tomáš Baťa は追い出されてしまったため現在は本社を海外にうつしているが、今ではこのBata 様式の街並みは、先進的な IT企業や、大きな ECサイトの拠点となっている。

現在の人口は約8万人。時々建築を勉強中の学生や、建築家もこの珍しい街並みを参考にするため、カメラを構え、建物を覗いてシャッターを切る姿を見かける。

 

 

Zlín(ズリーン)で出会ったフィルムカメラの似合う男女

「やあ。君のカメラ、クールだね。」

カメラを構えつつ、この街をじっくりと見て回っていると、首からフィルムカメラを下げた若者のカップルから声を掛けられた。「君たちのカメラもいいね。」と会話をし始めて、気づいたらけっこうな長い時間、話し込んでいた。

「今日は建築学部の友人を、私の故郷である『Zlín』に連れてきたの。ここはチェコの中でも建築が特徴的で、興味を持っていたから。」と話す Eliška(エリスカ、左)。大学1年生で、ドイツ語と英語を専攻しているそうだ。

 

「Zlín の建築は面白いね。チェコの建築は、ルネサンス様式やアールデコの建造物みたいに装飾が豪華な建物が多いんだけど、この街は街全体が同じような建物で構成されているんだ。装飾は最低限で、実用性を重視したファンクション様式って言うんだよ」と、建築学科に通う Vladimír(ヴラディミル、左)が語る。

 

この街を歩いていると、まるで巨大な大学構内にいるかのような感覚になる。しかしそれぞれがアパートだったり、図書館だったり、オフィスだったりする。ファンクション様式で街全体を統一すると、見栄えはもちろん、柱や外壁が壊れてもすぐに直せる点がメリットだったそうだ。

どことなく高度経済成長期の雰囲気を感じる。

 

中でも面白いのが、Bata の元本社。現在は誰でも入ることができる市庁舎となっているのだが、100年以上も前の建物とは思えないギミックがたくさん隠されている。

 

例えばこの部屋。一見すると普通の部屋かもしれないが、実は1階から16階までを自由に行き来できるエレベーターオフィスとなっている。移動する時間がもったいないので、Bata はここで仕事をしていたそうだ。

 

電話で会議に参加したり、万年筆のインクで汚れた手を洗うための水道まで整備されていたことに驚く

「建築って面白いでしょ」と Vladimír が嬉しそうに話す。なるほど、ファンクション様式云々はともかく、これは建築学科じゃなくても面白い。

 

ところで、なんでフィルムカメラを使っているの?

日本ではフィルムカメラが流行っているが、ここ Zlín でもフィルムカメラを持って歩く人を多くみかけた。フィルムカメラって人気なの? と聞いてみた。

 

Vladimír「今はデジタルカメラで何枚でも写真が撮れてしまうけれど、やっぱり1枚ずつ撮影する重みというか……大事に撮れるのが面白いね。今、そういった意味からチェコではフィルムカメラが流行っているんだよ。」

Eliška「私は昔からフィルムカメラに興味があったわけじゃないの。大学に入学したときに彼に教えてもらって、そこからフィルムカメラを持ち歩くようになったわ。」

 

日本でもフィルムカメラを使っている人に理由を聞くが、チェコ人のカメラ好きも同じような返答だった。チェコと日本は物理的に距離はあるが、カメラが好きな人の思いは似ているんだなあと思った。

 

「外国人に友達ができて嬉しいわ。色々な国の人と繋がりたいの。あなたのことも1枚撮らせて! 」と Eliška が話す。この写真はお互いにシャッターを切りあったときのもの。

思わぬ場所での素敵な出会い。

 

まとめ

Zlín での滞在時間はそう長くはなかったのだけれど、面白い建築に、素敵な出会いがあって、僕の中ではとても印象深い街の一つとなった。

チェコでの旅行記はまだまだ続く。