中野で10月21、22日の2日間に渡って開催の「秋のヘッドフォン祭2016」より。Klipsch(クリプシュ)が12月に発売予定の Bluetooth ヘッドホン「Reference On-Ear Bluetooth」、「Reference Over-Ear Bluetooth」の試聴レビューをお届け。
僕が感じた音質のレビューのほか、なんと米国から製品開発部長とアコースティックエンジニア(イヤホンやヘッドホンの音を調整する人)が来日。短い時間だが話を聴くことができたのでその辺もお伝えしたい。
なお記事内では「ヘッドフォン祭」のイベント名は”ヘッドフォン”、製品のジャンルは “ヘッドホン” と表記する。理由は「ヘッドホン」で検索する人の方が多いため。
Klipsch(クリプシュ)の Bluetooth ヘッドホン「Reference On-Ear Bluetooth」
こちらが 12月2日に国内発売予定の Bluetooth ヘッドホン。耳をカポっと覆うタイプのオーバーイヤー型ヘッドホン「Reference Over-Ear Bluetooth」(税込3万2,400円)と少し小型で耳の上にのっけるタイプのオンイヤー型ヘッドホン「Reference On-Ear Bluetooth」(2万7,000円)だ。
Klipsch では、このモデル以前にも Bluetooth 対応のイヤホンタイプの製品は発売していたが、Bluetooth対応でいわゆる「ヘッドホン」タイプの製品を国内で発売するのは初めて。
オンイヤーとオーバーイヤーのどちらも 40mm のダイナミックドライバを採用し、Bluetooth 4.0 でスマートフォンや音楽プレーヤーと通信する。プロファイルは A2DP / AVRCP / HFP に対応。コーデックは SBC / AAC /aptX をサポートする。
なお ‘Referance’ の名前は、クリプシュのフラッグシップホームシアタースピーカーから。クリプシュが70年間培ってきた音響エンジニアリングと工業デザインを取り入れているためと謳う。
日本では「クリプシュ」という企業名でピンとくる人は少ないかもしれないが、米国ではオーディオ専門店や家電量販店で売り上げトップの人気カンパニー。全米の劇場で採用されているスピーカーでもNo.1のシェアとなっている。
小型でコンパクトな「Reference On-Ear Bluetooth」
まずは耳の上にのっけるタイプの「Reference On-Ear Bluetooth」から。軽量かつコンパクトなサイズ感が特徴だ。カラーはクリプシュのデザインのトレンドである「ブラック x ゴールド」で、高級感を感じるデザイン。
サイズ感的には、比較するなら beats の HD Solo のような感覚。重さは232gほどで、400mAh のバッテリーを搭載し、約20時間の連続再生が可能としている。
正面から見るとこんな感じ。小型だが左右非対称なデザイン。イヤーパッド部分は低反発素材でできており、側圧もそこまで高くなくないので割りと快適に使える。
ちなみに持ち運ぶ際には、上画像のように折りたたんで収納できる。
持ち運ぶ際には付属のキャリングケースに入れて持ちあるける。
気になる音質は?
気になる音質について。今回は Bluetooth ヘッドホンということで、僕が普段使っている FiiO X5 で試すことはできなかったので、iPhone 7 Plus と Amazonプライムミュージックの組み合わせで試してみることに。
気になる音質はというと Image X12i とはちょっと性質が異なり、ややドンシャリ寄り。クリプシュ特有のディープな感じのサウンドではなく、軽く聴き流せるような感じの音質だと感じた。
もちろん人によって個人差はあると思うが、僕個人の感覚としては同じくクリプシュが発売している XR8i に似たようなサウンドを奏でるヘッドホンだと感じた。
Klipsch New-Xシリーズ XR8i KLKXR8I111
耳がすっぽり被るクリプシュのフラッグシップ「Reference Over-Ear Bluetooth」
こちらがクリプシュのオーバーイヤータイプの Bluetooth ヘッドホン「Reference Over-Ear Bluetooth」。オンイヤーと比較すると、イヤーカップが大きい分、より無骨な印象を受けた。
上で紹介したオンイヤーヘッドホンとの最大の違いは、Klipsch Balanced Dynamic (KDB)Driver を採用している点。これによりドライバーの歪みが減り低音域と中音域のギャップが少なくより滑らかに聴こえるという。
重さは 272g で、オンイヤータイプと同じく400mAh のバッテリーを搭載する。こちらもおおよそ20時間の連続再生が可能。
電源ボタンやボリュームボタンなど、全ての操作を右側のイヤーカップからできるようになっている。
なおオーバーイヤータイプもイヤーパッドには低反発素材を採用。オンイヤーのように直接耳に当たるわけではないものの、柔らかい素材でより快適に音楽を楽しむことができる。
気になる音質は?
音質の系統は、やはりオンイヤーヘッドホンとそう変わらずにややドンシャリ寄り。ディープで艶やかな音というよりは、EDM やポップ、フォークなどの爽やかな曲にマッチするような印象を受けた。
X12i が女性ボーカルの息遣いまでを聴かせる音だとすれば、こちらは男性ボーカルを綺麗に聴かせるような感覚。例えばジャスティン・ビーバーのような、ボーカルが耳元で囁くような音によく合う。
ただ、今回は Bluetooth と Amazonプライムミュージックで試聴したため、本質的な意味でこのヘッドホンの実力を引き出せてはいないと思っている。本当は有線で FiiO X5 と接続すればまた違った聴こえ方なのかもしれないが。
まぁ Bluetooth ヘッドホンとして打ち出しているし、となるとやはりイヤホンジャックの存在しない iPhone 7 / 7 Plus で聴く人もかなりの割合でいると思う。そうした場合、音楽ストリーミングサービスを介したライトな使い方をするユーザーが必然的に多くなると思うので、今回の iPhone 7 Plus + Amazonプライムミュージックという組み合わせは、ある意味リアリティのあるレビューができているかもしれない。
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ちなみにオンイヤー(Before)とオーバーイヤー(After)の装着感の違いはこんな感じ。
実際に開発者に会って話を聞いてきました
今回最もサプライズだったのが、米国からわざわざ製品開発マネージャーの VLAD氏(左)と、クリプシュの音を作っているアコースティックエンジニアの ANDREW氏(右)が来日していたこと。普段愛用しているイヤホンの開発に携わっている人を目の前に、ここぞとばかりに思ったことをいくつか聞いてみた。
Q:なぜ同じメーカーなのに X12i などのイヤホンと今回の Bluetooth ヘッドホンの音の性質が異なるのか
A:クリプシュとしては「クリプシュの音」という軸があるため、なるべく愛用者の期待に沿ったクリプシュの音を出せるように調整している。とは言え、イヤホンとヘッドホンは技術的にも性質が異なるため、全く同じ系統の音の性質を表現するのは極めて難しい。イヤホンは耳に密着するため、よりディープな音に聴こえると思うが、ヘッドホンは耳への密着度がイヤホンに比べて低いため、ちょっと違って聴こえる。ただ、ヘッドホンもイヤホンも関係なくフラットで「クリプシュらしい音」を表現できるように意識している。
Q:「Reference On-Ear Bluetooth」と「Reference Over-Ear Bluetooth」のライバルとして意識しているのは?
A:もちろんこの価格帯(3万円前後)のヘッドホンはほとんどチェック済み。そういった意味ではこの価格帯のヘッドホンの多くがベンチマークとなっている。強いて言えばOPPOの「OPP PM-3」と、オーディオテクニカの「ATH-M70x」は特に意識している。
もちろん同価格帯のどのヘッドホンよりもクオリティが高く、良い音になるように全力を尽くしている。
Q:「Reference On-Ear Bluetooth」と「Reference Over-Ear Bluetooth」でどんなジャンルの曲を聴いてほしいか
A:どんなジャンルの曲でも合うように、クリプシュはフラットで原音に忠実な音にチューニングしている。ロックでもジャズでも、ラップのような音楽でも幅広く楽しんでもらえるように調節しているつもり。
ただ僕(アコースティックエンジニアのANDREW氏)はライブスタジオでしっかりと録音されたような音源で聴いてほしいと思っている。フラットで淀みのない音源がクリプシュの製品にはよく合うから。
まとめ
こんな感じで、クリプシュの「Reference On-Ear Bluetooth」と「Reference Over-Ear Bluetooth」のレビューは終了。まだ発売していないヘッドホンを試せただけでなく、高校時代から愛用しているイヤホンのアコースティックエンジニアと会話できたというのは大きな収穫だった。
「Reference On-Ear Bluetooth」と「Reference Over-Ear Bluetooth」の日本における発売日は12月2日。価格は税込価格でオンイヤーが2万7,000円、オーバーイヤーが3万2,400円となっている。アマゾンやクリプシュの代理店フロンティアファクトリーの公式ページで予約が可能となっている。
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