90mm マクロが見る世界――。
僕が独立したばかりの頃、ブツ撮り用にマクロが欲しいと『物撮り用にマクロが欲しい。α7シリーズで使えるEマウント用マクロレンズ9本』という記事を書いたことがあった。その記事を読んだ『Yurilog』の yuri 氏(@r_yuriii )が、ソニー FEマウント用レンズ『FE 90mm F2.8 Macro G OSS SEL90M28G(以下SEL90M28G)』を独立祝いということでプレゼントしてくれた。どんな絵が撮れるのか、どんなシーンで活用できるかをレビューしておきたい。
大きくて重たいレンズだが、マクロ撮影で超近距離の撮影も可能ということを考えると、風景撮影からポートレート、そしてブツ撮りや生物の撮影までこなしてくれる、かなり心強い一本だ。
■ココが良い
- 90mm で 28cm まで寄れる
- 切れ味の良い描写と柔らかいボケ味
- レンズ内手ブレ補正で三脚なしでも撮りやすい
■ココが残念
- マクロのためAFが遅く1秒以上待つことも
- 602g と(FEマウントにしては)重くて大きいため持ち出しにくい
フルサイズで感じる 90mm マクロの世界。ソニー純正のFEマウント単焦点レンズ『SEL90M28G』レビュー
- 実売価格:12万5,000円程度
- 焦点距離:90mm
- 開放F値(明るさ):F2.8
- 重さ:602g
こちらがソニーが2015年に発売したFEマウント初となる中望遠マクロレンズ『SEL90M28G』。希望小売価格14万8,000円、実売12万円ほど。ちょっと高めのレンズだが、ソニーの高性能 Gレンズとして展開されているフルサイズ換算で 90mm のマクロで、絞り開放からキレの良いシャープなマクロとして評判が良い。
オートフォーカスにも対応しているし、手持ち撮影時には嬉しい光学手ブレ補正を搭載している点でも、僕が普段使っているα7Ⅱとの相性も良い中望遠マクロだ。防塵防滴仕様なので自然の撮影でも活躍する一本。
マクロ撮影向けの単焦点レンズであるため、一般的にはそこまでニーズがあるレンズではないものの、花や昆虫などの生き物の撮影からブログで使うブツ撮りなどに使うことができる。また F2.8 で 90mm なので、ポートレート撮影にもそれなりに使えるのも嬉しいポイントだ。
それでは実際に作例を踏まえて紹介していきたい。
SEL90M28Gシーン別作例
マクロと言ったらまず撮りたいのが硬貨。誰でも分かるサイズ感だし、どのくらい寄れるのかも分かりやすい。この写真は SEL90M28G の最短焦点距離 28cm から1円玉を撮影したところ。90mm の最短焦点距離だと、等倍でもこのサイズ感で写せる。
SEL90M28Gの作例:花を撮影
その辺に咲いている花もこの臨場感。手持ちかつ風で揺れるので、90mm のマクロだとフレーム内をいったりきたり。明るくても撮影するのが難しい被写体だった。すべて F2.8でシャッタースピードは 1/1000~1/2000。
ピント面はキリッとシャープなのに、ボケは柔らかく非常に美しい。
SEL90M28Gの作例:動き回る昆虫類
実際に撮影してみて難しかったのが昆虫類。すばやく動き回るし、風などにも左右される。SEL90M28G はオートフォーカスがちょっと遅いので、子どもとか昆虫とか動き回る被写体は難しい。
ハグロトンボ(神様トンボ)をちょっと遠くから狙った一枚。こちらも F2.8, 1/1000 で撮影。50mm だとトリミングしなければ難しい距離感でも 90mm ならトリミングしなくてもフレーミングできた。
近くにミヤマアカネが止まったので、ジリジリと寄りながら撮影した一枚。90mm マクロとはいえ、トリミングなしでここまでトンボに寄るのは難しかった。ここまで寄れると複眼や毛の一本一本まで分かる。
体長が5mmほどで、グリーンの光沢が綺麗なニセ アシナガキンバエ(ウデゲヒメホソアシナガバエのようにも見えるが体毛が薄く前脚に直立刺毛がないように思えるので暫定でニセ アシナガキンバエとする)もこの通り。逃げないような距離(たしか50cmくらい離れた)ところから撮影した。
SEL90M28Gの作例:ネコとか金魚とか生き物
こちらは水族館で撮影した一枚。比較的暗い場所で動き回る金魚は撮影が難しいため、ISO を2500まで上げて撮影。金魚だけを引き立たせるために黒レベルを下げて加工している。
ヤマトヌマエビをピント面ギリギリで撮影(F2.8)。日中の外での撮影はともかく、水族館内のように薄暗い場所で、なおかつ動き回る生物を撮るのはちょっと難しい。こちらも ISO1000 で撮影している。
ネコ。体毛一本一本が立体的に表現されているのは嬉しいところ。
SEL90M28Gの作例:ブログ用のブツ撮りとかマクロ撮影
上記のように生物を撮影しに出かけるのは稀だが、SEL90M28G は日常的にブツ撮りでも活躍している。例えばこのようにモノの細部だけを切り取って紹介したい場合などはかなり便利。トリミングをしなくても綺麗に撮影ができる。
ただ難点は 90mm の F2.8 でこれだけ寄ると、ピント面が非常に浅くなってしまうところ。F8 程度でストロボを焚いて撮影しなければしっかりとピントを合わせて明るく撮るのは難しい。
SEL90M28Gの作例:ポートレート系もそれなりに撮影できます
F2.8 と明るさ的にはややポートレートとしては物足りなさは感じるが、焦点距離は 90mm なのでそれなりにボケ感を楽しみながら人を撮ることも可能だ。
生物の撮影メインで持ち出して、たまに風景とか人を撮るのもけっこう面白いかも。
SEL90M28Gの作例:90mmマクロで風景を切り取る
90mm の中望遠ということで、それなりに圧縮効果のある風景写真となるのも面白い。単純に山や海といった自然風景の写真よりも、商店街や線路など、街中で人を入れて撮るのが面白いなあと感じる。
まとめ
今回は実際にソニーの中望遠マクロ『SEL90M28G』で撮った作例を踏まえつつ、レビューをしてみた。マクロレンズというと使いどころが限られるイメージだが、実は風景やポートレートなど幅広く使える万能レンズ。画角的には慣れが必要だが、さまざまなシーンで使用することができる。
マクロ撮影をする場合はシビアなピント調整とシャッタースピードの確保が必要となり、室内ではストロボがないと難しいが、日中の外で撮影するのであれば気軽に持ち出して楽しめるレンズだ。
16mm という広角が見る世界。ソニー の FE 広角ズームレンズ『SEL1635Z』シーン別レビューも併せてどうぞ
ソニー の FE 広角ズームレンズ『SEL1635Z』のレビューも書いているので良かったら一緒に読んでみてください。