純正のMマウント中望遠が3万円〜で買える時代。
これまで広角や標準域ばかり写真を撮っていたのだけれど、ここ最近は望遠レンズで得られる「圧縮効果も楽しみたいなあ」と思うようになった。
撮りたいのは背景が消し飛ぶようなポートレートではなく、カリッとした風景写真。せっかくだから Leica M10 で撮りたいという思いもあって Mマウントの望遠レンズを探していたところ、135mm の中望遠レンズ『135mm f/2.8 Elmarit-M III』が3~7万円程度で購入できることを知る。
この価格で手に入るなら無料でしょ! と思いつつ、気づいたらマップカメラで PayPay 払いで買っていた。まだ使い始めて日は浅いけれど、僕が調べたときにはあんまりウェブ上には作例がなかった。ファーストインプレッション的に記事にしておこう。
▷中望遠で切り撮る都会。Leica M10 + Elmarit 135mm/f2.8 と新宿さんぽ
▷カメラと旅と、プラハ。Leica M10 と135mm で切り取る中央ヨーロッパの世界
■135mm f/2.8 Elmarit-M III
発売 | 1976年〜1996年 |
---|---|
焦点距離 | 135mm |
絞り値 | f/2.8~f/32 |
撮影距離 | 1.5m~無限遠 |
画角 | 18.2°度 |
レンズ構成 | 3群5枚 |
フィルター | E55mm(もしくは S7) |
質量 | 730g |
Leica Mマウント用の中望遠レンズ『135mm f/2.8 Elmarit-M III』レビュー
こちらが Mマウント用の中望遠レンズ『135mm f/2.8 Elmarit-M III(エルマリート 135mm/f2.8)』。カナダライツ製で、1976年から1996年に生産された比較的新しい “オールドレンズ” だ。
F2.8 と現行の『APO-TELYT-M F3.4/135mm』よりも明るく、レンジファインダーでも焦点を合わせやすくするメガネが備わっている点が特徴。
“スナップ用のM型ライカ” にこのレンズは大きく人気が薄いためか、カナダライツ製にもかかわらず3~7万円と手頃な価格で取引されている(ライカのレンズって定価だと50万円とかするので、それに比べたら安い)。僕はマップカメラで良品を6万9,800円で購入した。
ちなみにマップカメラでは 2nd との表記があるが、型番から製造時期やレンズの種類を調べてみると、海外では 3rd として紹介されているっぽい。
Elmarit 135mm/f2.8 を Leica M10 に装着してみる
Elmarit 135mm/f2.8 を Leica M10 に装着するとこんな感じ。35mm や 50mm のレンズとは対照的でかなり鏡筒が大きい印象。まあ Leica M10 自体が割とコンパクトなのでそう見えるだけで、一眼レフのレンズと比較したらかなり小型だ。
メガネ部分は外せない(レンジファインダーとレンズの距離計が狂ってしまうため)が、デジタルライカならビゾフレックス(外付けEVF)を装着したり、ライブビューでの撮影もできるので、レンジファインダーを覗いて撮らないのであれば外すことは不可能ではないとのこと。
α7Ⅱなどで使うのであれば取り外す必要はありそうだが、基本的に取り外しはできないと思ったほうが良さそうだ。
Leica M10 とセットで重さは約1,430gとかなり重たい。首からぶら下げるとけっこう疲れるので、普段は別のレンズを装着しておいて、ここぞというときに Elmarit 135mm/f2.8 を装着する運用になると思う。
ちなみに Elmarit135mm/f2.8 は公称730gとしているが、自宅で量ると777gだった。レンズにはメガネ自体の重さは反映されていないのかもしれない。
Summicron 35mm/f2 とサイズ比較。鏡筒の長さは2倍以上の差はあるため持ち歩き用のカメラバッグのサイズも考える必要はありそう。
「【作例】90mm マクロが見る世界。ソニーのFEマウント『SEL90M28G』レビュー」と比較してみたところ。ミラーレス一眼用の 90mm と比較すると 135mm(かつ F2.8 と明るい)ということを考えると、このサイズは許容。メガネが取り外せないのでかさばるけれど。
レンズ自体の紹介をしたところで作例も紹介しておきたい。
作例集:ギュッと世界を圧縮する。Leica M10 で切り撮る135mmの世界
ある昼下りに友人と河川敷に訪れたときの写真。135mm ってどことなく中途半端な印象を持っていたが、実際に使ってみると「一歩引いて撮る」がけっこう面白い。
上の3枚は F2.8 の開放で撮影。透明感を感じる空の青と、なだらかなボケ味が気に入っている。また Mマウントレンズ特有のピント面がカリッと写るのも気持ちが良い。50年近くも前に製造されたレンズとは思えないよなあ。
点光源が多角形にボケる感じもちょっとおもしろい。
ちょっと離れた被写体もこんな感じで写すことができる。135mm はポートレート用の焦点距離向けのイメージがあったが、カメラを意識させずにひっそりとスナップを撮るときにも良い。
さすがに重いので、持ち出すには「今日は 135mm で撮るぞ! 」みたいな意気込みも必要だけれど。
何気ない街並みとか人の匂いのする写真も取りやすい。適当にファインダーを覗いてシャッターを切っても、記事の合間に差し込む絵みたいなものがけっこう撮れる。
この焦点距離での写真スキルも上げたいなあ。
ライカで楽しむ圧縮効果。
全然関係ないけれど、僕が小さい頃に初めて上京したとき「テレビとか教科書で見るよりも看板と看板の間に隙間があるんだなあ」と思ったことがある。僕が初めて圧縮効果を感じたのはそれだった。
夜も撮れないことはないけれど、当然手ぶれ補正はないのでシャッタースピードを 1/160 くらいにしないと手ブレする。鏡筒が長い分ブレやすいので 、夜景を撮るなら三脚があった方が良いかも。
まあでも Leica M10 なら ISO6400 でもなんとかなるので Instagram とかウェブに上げるなら問題なさそう。
最短焦点距離の 1.5m で撮影したところ。氷とグラスの硬い質感をしっかり表現している感じ。物撮りに使おうとは思わないけれど、感覚的には Summicron 35mm とかよりも寄れる印象。
まとめ
簡単なファーストインプレッション的な記事ではあるが、最近買ったばかりのMマウント中望遠レンズ『135mm f/2.8 Elmarit-M III』を紹介してみた。
Mマウントに 135mm は昔からラインナップとして存在しているけれど、あまり「僕使ってるよ」という声は聞かない。なんとなく 35mm か 50mm という空気感があるなかで、ひっそりと 135mm(現行ではないけど)のライカレンズが3万円〜で買えるということを考えると、これほどお得な買い物はないと思う。
ボケ味が柔らかく撮れるし、発色もきれい。そして被写体の質感が的確に表現できるレンズなので135mm を試したいという人ならばぜひ使ってみてほしい。