この目で見た景色をよりダイナミックに捉える 12mm という画角。
Leica M10 を購入して以来、ほとんどの写真を 35mm で撮影してきた。コントラストが高く立体感のある浮き出る雰囲気が好きで、日常的に持ち歩くカメラは基本的にこのセットで持ち歩いている。
ただちょっと遠出をするときや、室内の写真を撮る際では 35mm よりももう少し広角の写真が撮りたくなる。今回 monograph から Voigtländer(フォクトレンダー)の『ULTRA WIDE-HELIAR(ウルトラワイドヘリアー)12mm F5.6 Aspherical II』を借りて実際に数ヶ月間使ってみたので、作例とともに紹介しておこう。
▷レンズを通して世界が広がる。α7 Rⅱ用に超広角レンズ「フォクトレンダー ULTRA WIDE HELIAR 12mm」を購入。|monograph
発売日 | 2010/3/23 |
---|---|
焦点距離 | 12mm |
絞り値 | f/5.6~f/22 |
撮影距離 | 0.5m~無限遠 |
画角 | 121° |
レンズ構成 | 8群10枚 |
フィルター | 67mm |
質量 | 230g |
大げさなほどに見ている景色を写し込む。Leica M10 で切り取る12mmの世界
今回のレビューは Leica M10 とこのレンズの組み合わせでお届けする。なお作例は撮って出しではなく、トバログっぽい感じに色味を調整して出している。色についてはフォトヨドバシとかを見たほうが良いかもしれない。
雄大な自然を切り取る
「この写真、本当に僕が撮ったの? 」と驚くほどにダイナミックで、コントラストが高い写真が撮れたのが、夏の軽井沢。
手が届くほどの範囲の木々から、遠くに見える山々までが一体となって不思議な世界が広がる。くっきりと青い空が、強い周辺減光によって強調されている印象だ。
もちろん Lightroom で現像をしているため撮って出しではないが、撮って出しだともっと青が強い。
普通の小道も 12mm という画角ならば、まるで自分が小人になったかのような、雄大な景色になる。ちょっとした散歩に持ち合わせると、近所なのに冒険している気分になれるかも。
F8 まで絞り、太陽を入れて牧場を撮ってみた。順光よりもシャドーがくっきりとしていて、太陽にもゴーストが現れることなく細部までしっかりとした描写に仕上がったように思う。
普段は 35mm を使って写真を撮るし、12mm という画角は常用するわけではないけれど、記事の間に超広角の絵を入れればけっこうなメリハリとなる。ULTRA WIDE-HELIAR 12mm は小型なのでカバンに入れていてもあまりかさばらない。
ちなみに Leica M10 のレンジファインダーは、12mm という超広角に対応していない。ただデジタルライカなのでレンジファインダー以外の機構はミラーレス一眼。電子ビューファインダーを覗きながら撮影することになる。
ただ超広角なのでピントはシビアではないため、明るい場所なら F8 まで絞って 3-5m くらいにピントを置いておけばファインダーを覗かずともスナップは問題ない。
人物ポートレートとか自分を入れて撮ってみる
チェコに旅に出たときに、三脚を立てて自撮りしてみたところ。距離にすると 1.5m くらいのところから撮っているのだけれど、超広角なのでかなり遠くから、そして上から撮っているように感じる。
なお Leica M10 や Mマウントレンズは基本的にオートフォーカスには対応していない。そのため自撮りでピントをあわせるのはけっこう難しいのだけれど、ULTRA WIDE-HELIAR 12mm は超広角なので F5.6 くらいでも「だいたいこの辺にピント置くか」でしっかりと合っている。
12mm の超広角ならば、自分の足元を入れつつ主観的な写真が簡単に撮れる。タイのトゥクトゥクでもカメラをこちらに向ければ、まるで隣の車両から撮っているようにも思えるし、足元を写す写真は何も考えなくても捉えることができる。
まあこのレンズが気になった人であんまり自撮りをすることはないとは思うけれど、それでもインスタグラムでキラキラとした写真をアップしたいのであれば、撮れるに越したことはない。
ちなみに手に持ったモノと周りの景色を一緒に写すのには都合が良い。「フェスに行ってきたよ」とか、そんな感じの臨場感ある写真を撮ることができるのは便利だ。
放射線状に広がる。パースを効かせた建物の写真を撮るのも面白い
この画角が面白いのは、やはりパースの効いた建造物の写真。目で見るよりもずっと大きく感じられ、マンションが天に向かって収束していく感覚が分かる。
実際に撮ってみるとこんな感じ。12mm の広角で「上手い構図でパースを効かせた写真に仕上げる」のはけっこう難しいのだけれど、Leica M10 で GoPro 的に撮れると考えればけっこう気がラク。
とりあえず記録用に撮っておくという写真にも良さそう。ただコントラストが非常に高く周辺減光も激しいため、暗部が目立つ場所だと黒が潰れがちなので調整が難しい。比較的新しいレンズだからか逆光でも意外に撮れるけど。
旅やレポートに。広角が1台あればなんでも記録できる
ブロガーとして必須なのは、やっぱり室内の全体像が分かる写真。F5.6 で超広角ということでかなり暗いので、基本的には三脚を立てるか ISO3200 くらいまで上げて撮ることになる。
ただこうしてウェブ上で写真を楽しむ分には手ブレはほとんど気にならないので、シャッタースピードを 1/30 くらいまで下げて撮っても大丈夫。
ブログや記録用に広角レンズを1つ、カバンのなかに忍ばせておくと、いざというときにも便利かもしれない。
フォクトレンダー『ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical II』
『ULTRA WIDE-HELIAR(ウルトラワイドヘリアー)12mm F5.6 Aspherical II』は、コシナが2010年に発売したフォクトレンダーブランドを冠した超広角のMF単焦点レンズ。価格は当時約9万円。
Leica VMマウントを採用しており、M型ライカで使用することが可能だ。距離計連動も行うことができるため、「旅に一本持っておくレンズ」として優秀。F5.6 とやや暗く周辺減光も大きいため室内ではちょっと厳しいが、外であれば十分なシャッタースピードのまま撮影できる。
■ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical II
- 発売日:2010/3/23
- 焦点距離:12mm
- 絞り値:f/5.6~f/22
-
撮影距離:0.5m~無限遠
-
画角:121°度
-
レンズ構成:8群10枚(絞り羽根は9枚)
- 重量:230g
まとめ
久々のカメラ機材に関する記事となったが、今回は超広角レンズについてのレビューを作例とともに上げてみた。121°度という画角は、人間がぼんやりと見える映像とちょうど同じくらいだそうだ。
よく標準レンズが人間の視界に近いと言われるが、実際に目の前に広がる光景は 12mm くらい。単焦点で使うのであればちょっと広すぎる気もするが、目の前の景色を1ショットで写せるというのは心強い。
気になった人はチェックしてみてほしい。
【関連記事】
▷どこか寂しく、艶やか。ライカと合わせる『フォクトレンダー NOKTON classic 40mm F1.4』レビュー